監督のS氏、制作プロデューサーA氏、
そして私の3人で集まり
現在進行中の劇場公開映画企画の
最初の「本打ち」を行なった。

本打ちとは「本の打ち合わせ」の略で、
この場合の本とは映画シナリオのことを指す。

朝10時、私達3人は
いつもの渋谷のカフェに集合。

実はその前夜から
この日の本打ちは
ハードな「商談」になるかもしれない、
と、私は少し身構えていた。

今年の1月、私は
素晴らしい芸術作品の「本」と巡り会った。

その芸術作品の「本」が
いま、我々の手元にある。

しかし、この本は
まだ準備稿にしかすぎない。

ここから、この準備稿を
更に磨いていき
撮影が始まる秋までに
何度も書き直して
最終稿をへと仕上げていく必要がある。

この「本」は監督自身が
魂を込めて書き上げたもの。
いわば自分の子供と同じようなものだ。

そうした「子共」に対して
他人にあれこれ意見を言われるのは
正直、誰しも心地良いものでは無い。

でも、皆が心地良いことばかりに向かってしまうと
ビジネスプロジェクトは失敗してしまう。

成功の扉を開く鍵は、実は
自分にとって居心地の悪い所に存在している。

この映画は決して商業路線の映画では無い。
これは芸術的路線の作品だ。

でも、たとえ芸術路線であったとしても
映画はビジネスであることには変わりない。

プロデューサーとしての私の役目は
この映画をビジネスとして成功させること。

それが私の責任。

だから、私は
誰よりもこの企画を客観的に分析して

プロジェクト全体が
ビジネスとして機能するよう
導いていかねばならない。

熱いコーヒーに手を伸ばし、
私は開口一番、監督に尋ねた…

「この映画で監督が目指すゴールはどこですか?」と。

監督「映画祭で賞を獲りたいです」
私「どの映画祭ですか?」
監督「カンヌで賞を獲りたいです」
私「では、この本はカンヌで脚本賞を獲れますか?」
監督「…」

続けて私は言った。

2010年のバンクーバー五輪
のフィギアスケートの大会で
金メダルを獲った韓国のキム・ヨナは
確かに天才で誰よりも努力家だったに違いない。

でも、オリンピックに出場する選手は
浅田真央を始め、そもそも全員が天才で努力家なのだ。

でも、そうした強豪の中で
キム・ヨナが金メダルが穫れたのは

オリンピックで金メダルを獲る為の
演技とはどのような演技なのか?
を徹底的にリサーチして練習し、
あらゆる方面に働きかけたからに違いない。

そして、我々はこの映画で
カンヌ映画祭で賞を獲りたい。

その為にやるべきこと・・・

それは

カンヌで賞を獲る為の映画とはどんな映画なのかを
徹底的にリサーチして
それに沿った映画に仕上げていくこと、なのだ。

その第一段階として

まず、カンヌで賞が穫れる
「本」を作り上げることが重要である。

監督は私の話を理解してくれた。

そして、この本を
より素晴らしいものへと
磨き上げてくれることを約束してくれた。

1ヶ月後、

本がどのように生まれ変わっているか
とても楽しみでドキドキする。

私の映画製作の旅はまだ始まったばかりだ…

そして最後にもう一つ…

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